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「機械翻訳と人力翻訳の違いは、何ですか?」
最近、このような質問をよく受けますが、この二つはまるで違うものです。
今回は、機械翻訳と人力翻訳の違いについて考えたいと思います。

人力翻訳の特長

ここでいう人力翻訳とは、プロの翻訳者による翻訳を指します。
人が翻訳するときは、通常、まずは原文を読んで意味を正確に理解します。次に文脈を考慮した上で、過去の訳例や辞書を参照しながら訳文に落とし込みます。原文と訳文の両方の文化を踏まえて、専門分野に応じた適切な用語や表現を選択していくのです。さらなる情報や知識が必要となる場合は、インターネットで検索を行います。このように、人は多くの要素から訳文を導き出しているのです。

機械翻訳の特長

一方、今のAI機械翻訳は人と違って原文の意味や文脈を理解していません。
では、どのように翻訳しているのでしょうか。
もともと、コンピューターは数を計算する機械なので、数値しか扱えません。AIもコンピューター上で動くシステムの一つですから同じことです。コンピューターに翻訳させるためには、一度全ての原文を数値の並びへ置き換えます。

このとき単語同士の意味が近いものは近い数値で表されます。例えば「I read books.」や「We read novels.」という文脈では「小説」と「本」は似た数値で表現されるということです。このように意味が近い単語や文をリンクさせながら、より精度の高い翻訳結果を出力するのです。

一方で、この数値処理をするときにエラーが起こり、人では考えにくいミスをすることがあります。例えば、「ベンツ」がなぜか「BMW」と翻訳されてしまうという具合です。二つの単語がともにドイツの高級車という視点から、近い数値へ分類されたものを取り違えたのかもしれません。しかし、最近のAIは複雑で内部で何をしているのか、実は開発者にもよく分かりません。これが、AIはブラックボックスと呼ばれる理由です。

機械翻訳と人力翻訳のプロセスは全く別のもの

このように、機械翻訳と人力翻訳のプロセスはまるで違うものです。最新の機械翻訳は、以前よりも格段にうまく翻訳できるようになりました。しかし、AIは言葉の意味を理解せずに、翻訳を処理しているだけなのです。また、出力した訳が正しいかどうかも判断できないため、人の翻訳ではあり得ない間違いをしばしば起こします。

機械翻訳が間違えることを前提に、使いこなす

諸説ありますが、機械翻訳の精度は9割程度といわれています。そうすると10回に1回、10ページのうち1ページ分の間違いが潜んでいるというわけです。私たちは、こうした機械翻訳のデメリットも理解した上で、うまく使いこなすべきでしょう。

最近では、機械翻訳が間違えることを前提に、それをサポートする機能を搭載したサービスも提供されています。例えば、当社のニューラル機械翻訳サービス「TecYaku(テクヤク)」は、機械翻訳を行った後のユーザーによる編集作業(ポストエディット)を支援する用語集やチェックアシスタントなどの機能を備えています。

このような機械翻訳が間違えることを前提としたサービスが、今後は広がっていくことでしょう。

参考文献:
斎藤 康毅『ゼロから作るDeep Learning 2 ―自然言語処理編』、オライリージャパン、2018年3月
隅田 英一郎『AI翻訳革命-あなたの仕事に英語学習はもういらない』、朝日新聞出版、2022年8月
川添 愛『ヒトの言葉 機械の言葉 「人工知能と話す」以前の言語学』、角川新書、2020年11月
山田 優『Google翻訳よりも高性能? AI翻訳「DeepL」の驚異的な実力』、マネー現代、https://gendai.media/articles/-/89485、(参照2022年11月1日)
一般社団法人アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)『MTユーザーガイド ― 機械翻訳で失敗しないための手引き ―』、
https://www.aamt.info/wp-content/uploads/2022/09/MT_userguide_v1-1.pdf,(参照2022年11月1日)

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