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Google、DeepL、Microsoft……無料翻訳サービスで機密情報はどこまで保持される?

無料で利用できる翻訳サービスが人気です。Google 翻訳やDeepL翻訳、Microsoft 翻訳などを普段から利用している方も多いことでしょう。特に近年は、翻訳の精度が大きく向上していて、日常生活でちょっとした翻訳をしたいときに便利に利用できるサービスとなっています。

ただ、無料の翻訳サービスを業務で利用することは避ける必要があります。普段の延長で気軽に資料作成に使ったり、マニュアルや契約書の翻訳などに使ったりしてしまうと、社内の機密情報が外部に漏れるリスクが出てくるからです。

なぜ、機密情報が漏れるのでしょうか。ご存知の方も多いと思いますが、こうした無料翻訳サービスでは、利用規約の中で「入力した情報を読み取って、精度向上の学習などに活用する」と規定していることが多いからです。社外の誰も知らない情報が翻訳サービスを通して他の利用者が目にする可能性があるのです。

そのため、業務で利用する際には、無料版ではなく、有料版を利用することが求められます。

では利用規約などでは実際にどう規定されているのでしょうか。ここでは、Google 翻訳、DeepL翻訳、Microsoft 翻訳について、利用規約やプライバシーポリシーを見ながら、有料版との違いを整理したいと思います。

1. Google 翻訳の場合

Google 翻訳のWebサイトには「プライバシーと利用規約」という項目があります。これはGoogleが提供するサービスに共通する項目です。Google 翻訳について追加で特別な記載があるわけではないので、ユーザーが入力した情報は、Googleのさまざまなサービスと同じように扱われると考えられます。

Googleのプライバシーポリシーには2024年3月現在、Googleは名前やパスワードの他にも「お客様がGoogleのサービスを利用した際に作成、アップロード、または他のユーザーから受け取ったコンテンツも収集します。これらの情報には、お客様が送受信したメール、保存した写真や動画、作成したドキュメントやスプレッドシート、YouTube 動画に投稿したコメントなどが含まれます」との記載があります。

収集した情報は「サービスの提供」や「サービスの維持、向上」「新しいサービスの開発」「コンテンツや広告など、カスタマイズしたサービスの提供」「パフォーマンスの測定」などの目的で利用すると記載があります。また、これらの目的以外に利用する場合は利用者の確認をとるとしています。

なお、Google 翻訳については入力したデータはGoogleが収集し、サービスの提供や維持、向上などに利用されるということです。

一方、Google 翻訳の有料版ともいえる、クラウドサービス「Google Cloud」で提供されている「Translation AI」では、Google Cloudのセキュリティポリシーやプライバシーポリシー、データ保護のルールの下でデータが管理されます。「顧客データを所有するのはお客様であり、Googleではありません」と明記され、顧客データを保護するためにさまざまな施策を講じていると詳細に説明されています。

https://policies.google.com/privacy?hl=ja

https://cloud.google.com/trust-center/?hl=ja

2. DeepL翻訳の場合

DeepL翻訳は、無料版の「DeepL」と、有料版の「DeepL Pro」で利用規約が分かれています。

無料版の利用規約(英語版)には2024年6月現在、「テキストはすべてサーバーに送信され、当社のニューラルネットワークおよびアルゴリズムの訓練および改良のために一定期間保持されます」「個人情報の類を含むテキストは利用しないでください」「個人情報の翻訳はDeepL Proでのみ利用可能です」との記載があります。

利用規約によって、個人情報を含むようなテキストをDeepL翻訳で入力せず、DeepL Pro翻訳を使うよう明記しているのです。

一方、DeepL Proの利用規約(英語版)の「3 DeepLのサービス」には「コンテキストと処理されたコンテキストは、プロダクト提供に技術的に必要な期間しか保持しない」「顧客の学習データはそれぞれの顧客との翻訳のなかでしか使用しない」とあります。

また、「DeepL Proサービス」の「2 DeepL Pro 翻訳」では「顧客のテキストと翻訳文は、翻訳文を作成して顧客に返送するために必要な期間のみ保持される」とあります。

DeepLの場合も無料版でも入力したデータがサービス品質の向上などのために収集されるようです。個人情報に類するデータについては、無料版で利用せず、有料版を使うよう明記されています。企業の機密情報や重要情報についても、無料版では利用せず、有料版を使うことが求められます。

https://www.deepl.com/ja/pro-license?tab=free

https://www.deepl.com/ja/pro-license?tab=pro

3. Microsoft 翻訳の場合

Microsoft 翻訳は、無料で利用できるサービスとして、検索サービス「Bing」で提供するテキスト翻訳、Webブラウザから利用できる「Microsoft 翻訳」、スマホアプリで利用できるMicrosoft 翻訳アプリ「Microsoft Translator apps」、Webブラウザ「Microsoft Edge」の翻訳機能の4つを提供しています。

一方、有料で利用できるサービスとしては、製品版の「Microsoft Office」が提供する翻訳機能や、クラウドサービスMicrosoft Azureで提供される「Azure AI Services」の翻訳APIなどがあります。

有料版のAzure AI ServicesやMicrosoft Office製品の翻訳については、サービスの機密性(Confidentiality)というページで「マイクロソフトのデータセンターに送信されたテキストや音声は記録されない」「トレーニング目的で使用されることはない」と記載されています。

一方、無料版の4つのサービスについては「テキストや音声はサービス改善の目的で記録する」と明記されています。

また、「Microsoftのプライバシーに関する声明」では「ユーザーからデータを収集します」「収集されるデータは、ユーザーが Microsoft とやり取りを行う際の状況、プライバシー設定などの選択内容、使用する製品や機能によって異なります」とあります。また、企業や学校などMicrosoftの企業向け製品や開発者向け製品を利用している場合は、契約によるとしています。

https://www.microsoft.com/en-us/translator/business/notrace

https://www.microsoft.com/ja-jp/servicesagreement

 

 このように、翻訳サービスの無料版と有料版は、プライバシーポリシーや利用規約によって明確な違いが設けられています。

 もちろん、無料版を使えば即座に機密情報が漏れるというわけではありませんが、「情報を収集し、サービス改善に活用する」と記載がある以上、「ここまでなら大丈夫」という線引きも難しいといえます。また、収集された情報が設定不備やトラブルによって漏えいしても、事業者側が補償するわけではありません。有料版のような契約があるわけではないからです。無料版には、情報漏えいのリスクは常にあるということを強く認識しておく必要があるでしょう。

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