ブログ Blog

AI技術の進歩に伴い、機械翻訳の精度は向上し、日常的に利用するシーンも増えてきました。「近い将来には、人による翻訳は無くなるのではないか」と考える方も多いでしょう。
しかし、翻訳業界や学識者の間では、「少なくとも近い将来において、機械翻訳が人の翻訳に置き換わることはない」という意見が主流です。
なぜなら、機械翻訳は言葉の意味を理解せずに翻訳しているため、人による翻訳ではあり得ない間違いをしばしば起こすのです。
例を見てみましょう。

My brother is older than I.

弟は私より年上です。

人間なら、「兄は私より年上です」と訳しますよね。ところが機械翻訳は、「兄」が年上なのか年下なのか、という知識を持っていないため、このような不自然な訳文を出してしまうことがあります。一方、人間がなぜ分かるかというと、「兄」は年上であるという一般常識を基に判断しているからです。

ここに、機械翻訳の限界があります。AIは人間のように一般常識など、言語外の知識を理解して翻訳しているわけではありません。そのため、文脈が考慮されなかったり、複数の意味を持つ単語を正しく訳せなかったりします。その訳が使えるのかどうかは、人間が判断しないといけません。その点を理解して機械翻訳を使いこなさないと、時には社会問題になることがあります。

例えば、韓国・平昌(ピョンチャン)冬季五輪のとき、ノルウェー選手団の調理師が、卵1,500個を注文したはずが、手違いで1万5,000個が届いてしまうハプニングがありました。現地のスーパーマーケットから食材を調達する際、機械翻訳を使って注文したところ、訳文ではなぜか数字の桁が増えてしまい、そのまま処理されてしまったそうです。

誤訳のリスクをどこまで許容できるかは、その文章の用途やそれぞれの業務内容によって変わりますが、損害が生じた場合、責任を負うのは人間です。AIの訳が正しいかどうかを判断できるのは、人間だけなのです。

ここまで、機械翻訳の限界について触れましたが、裏を返せば、知識を持たずに高精度な翻訳結果を出せるほど、機械翻訳は進歩したとも言えます。われわれ人間は、機械翻訳の精度に合わせた使い方をもっと知ることで、外国語学習に費やす時間を、自身が受け持つ本来の業務へ回すことができるのです。当ブログでは、これからも機械翻訳の便利な使い方を紹介していきます。

参考文献:
川添 愛『ヒトの言葉 機械の言葉 「人工知能と話す」以前の言語学』、角川新書、2020年11月
『卵1500個の注文が1万5000個に ノルウェー選手団、翻訳で手違い』、CNN、https://www.cnn.co.jp/fringe/35114496.html(参照2022年11月1日)

お問合せ・資料請求 Contact us

まずはお試しください!
30日間無料トライアル実施中!!

まずは無料トライアルでお試しください。導入しようかお悩みの方でも、今なら30日間しっかり試して、じっくり検討することができます。その他のお問合せや資料請求も、お気軽にお声がけください。

トライアル実施中